黒田発言とその後

黒田発言とその後

昨日のアジア時間は終日日経平均株価が堅調さを維持する中で、JPYが全面安の展開となりドル円は6/11以来の107円台ミドル回復となった。

東京仲値決済(9時55分)に向けて買い進まれるものの、その後は短期投機筋の利食い売り並びに本邦輸出企業の売りに押され106.87まで下落した。一部任天堂株のヘッジ売りがドル円利食い売りを誘発したと言う向きもあり、満更看過できない動きであったともいえる。

アジア株の騰落は区々。

欧州時間に入ると、欧州株は総じて軟調な始まり、英独等コア長期債金利は上昇して始まり、独10年債金利は7月15日以来のプラス圏浮上。

午後5時33分に「日銀黒田総裁、ヘリコプターマネー必要も可能性も無い」と伝わると、USDJPYが急落、105.43安値を示現。しかしその後、このニュースが6/17に行われたものであると報じられると、一転ショートカバーを誘発し、106.50手前まで上昇。

注目のECB理事会は予想通り据え置き、その後のドラギ裁の会談も「Brexit後だが、行動には時期尚早、最近の調査はインフレに関しBrexitの大きな影響が無いことを示唆、Q2(4-6月期)も景気回復は継続。」、金融緩和への言及も無く相対的にタカ派的、これを受けて欧米長期金利は上昇を更に加速した。一方で、銀行部門を支援する意向も示し、対南欧を中心に周辺国対独スプレッド(欧州各国の10年債金利の対独10年債金利の差)は低下。

米10年債金利は一時1.62%台を付けるがその後は一転反落となり、全般的にドルが売られる展開となりUSDJPYは戻り高値106.49より反落。

原油は反落、金は反発、ダウは10日ぶりの反落、米株3指数も揃って反落。VIX指数は12.74

一日を通じてみると、JPYが最強、以下AUD、CHF、EUR、DKK、SEK、GBP 一方で最弱がNZD、CAD、NOKっとなった、結果的に週前半から中盤までアンダーパフォームしてきたJPYをセレクティブに買い戻した格好となった。

指標となる米10年債金利は一時1.62%台まで回復したものの引けでは1.558% この結果日米長期金利差は1.779%まで再び低下してしまった。これと整合的なドル円レベルは104.6568となる。昨日まで金利差からは説明できないほどUSDJPY相場との大幅な乖離が生じていたが、米長期金利の絶対的な上昇が見込めない現在、両者の乖離はUSDJPY相場の下落により調整されるものとの見方を堅持している。

さて、本日だが、USDJPY相場は黒田発言直前の106.75レベルを直後の訂正コメントでも回復しておらず、現状105.80レベルである。これは昨日前半まで為替を動かす3要素の3投機ポジションの巻き戻しが過度に進捗した結果、高値を追ってまで買い戻しを迫られている投機筋が徐々に減少してきている証左でもある。

週末前の金曜であることを鑑みれば、107円台での手当てに後手に回った本邦輸出企業、ポジション調整のドル売りが五月雨的に持ち込まれる可能性がある、政府サイドからの新しいニュース等でない限り、戻りは極めて限定的と考えられる。